Seventh Scope

ファッションコラム
ファッションのことパターン(型紙)のことを
第七企画の切り口で考えてみます。

2017年09月23日

東京ガールズコレクションに思う

 
今年も東京ガールズコレクションが催されたようである。

今年も東京ガールズコレクションが
催されたようである。
言うまでもなく日本では最大の
ファッションイベントであって
メディアでも大きく取り扱われていた。
 
最近ではファッションショーのようなもの
と、言うかファッションイベント自体が
テレビなどで取り上げられることが
少なくなったことを考えると
T.G.Cが注目されること自体は
繊維業に身を置く物として
ありがたい話ではある。
 
しかし筆者は
ある種の抵抗を感じざるを得ない。
 
「あれは『コレクション』と呼ぶべきものなのか」と。
 
パリコレクションやミラノコレクション
勿論、東京コレクションもそうだが
筆者が持つ「コレクション」のイメージとは
決定的に違うように感じるのである。
 
筆者は別にパリコレ等の方向性のものしか
「コレクションの名を使うな」などと
言う気は毛頭無い。
ついでに言うと、筆者は若いころから
ファッションショーのようなもの全般に対して
肯定的な感情を持ってもいない。
 
そんな立場から見てさえ
その従来のコレクションと
東京ガールズコレクションとの違いに対して
ある種の危機感のようなものを抱いてしまう。
敢えて誤解を恐れず
筆者のT.G.Cに対する印象を言葉にすると
 
 「その辺で売ってる服を着て歩いているだけ」
 
と、言った感じである。
ファッションの世界で言う「コレクション」とは
デザイナーなりブランドの企画者なりの
「独創的な世界観」を表現する場ではなかったかと
どうしても思ってしまう。
はたして、T.G.Cにそれを求める事が
出来るのだろうか。
 
参加したことがある訳ではないので
詳しい事は分からないが
T.G.Cではショウで見た服を
その場で注文して買う事が出来ると言う。
その事自体は現在の消費者の購買スタイルに
マッチしているのであろうし
なにより売り上げとしても
なかなか良好な結果を出しているとも聞く。
短期的に見れば
ビジネスとして成功していると
言っていいのかも知れない。
 
しかし筆者は
そこに集まっているのは
いわゆる「一見のお客」ばかりじゃないのかと
そんな風に思ってしまうのである。
ショウで服単体をみて
それを良く思ったから買っただけの話ではないかと。
この事は中長期のブランド戦略を考えた時
必ずしもいい事ではないのではないか。
 
ショウの場で「世界観」を見せる必要がなくなれば
服を作る上でもその「世界観」の必要性が少なくなる。
分かりやすく言うと
そのブランドが服を作る上で
「どう言うコンセプトにそっているか」と言う
アイデンティティのようなものが
希薄になるのではないか、と思うのである。
言い換えれば、そのブランドの服全体を統一した
ある「一つのイメージ」を
消費者に抱かせにくくなるのではないかと
そう感じるのである。
この事は中長期的なスパンで考えた場合
ある種致命的なダメージになりはしないか。
 
服一点一点を単独で見せて
それのみを消費者の評価に任せるのであれば
そもそも「ブランド」と言うもの
存在価値自体がなくなってしまうと思う。
やはりブランドは「世界観」を持つべきだし
それを消費者の前に表現して
そして、その表現した「世界観」を
支持してくれる消費者こそが
そのブランドの「顧客」と成り得るのではないだろうか。
 
ともすれば押しつけがましい
考え方であるかもしれないが
モノづくりとは
作り手側のある種の「意志」が反映されるべきであると
筆者自身は考えている。
そんな立場からT.G.Cを見た場合
 
 「服自体の『作り手』が不在」
 
と、言った感が否めない。
その事がファッション業界の未来にとって
決して好ましい事ではないと思うのは
筆者だけであろうか。